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縁プロジェクト_vol.15

革新のキモノスタイルで
和の新しい愉しさを暮らしへ。
斉藤 上太郎
キモノデザイナー
斉藤 上太郎氏
PROFILE

京都出身。祖父は染色作家の故斉藤才三郎、父は現代キモノ作家・斉藤三才。近代染色作家の礎を築いてきた家系に生まれる。27歳の最年少でキモノ作家としてデビュー以来、現代空間にマッチするファッションとしてのキモノを追求。TVや雑誌などメディアにも頻繁に紹介され、新進気鋭のキモノデザイナーとして活躍。現在は「和を楽しむライフスタイル」を提唱し、プロダクトやインテリアの製作まで多方面に才能を発揮している。株式会社三才 代表取締役社長。東京ファッションデザイナー協議会正会員。

2017年4月に開業した銀座最大級の複合商業施設「GINZA SIX」。
ラグジュアリーブランドが240店以上出店し、日本の文化の集積地としても世界から注目を集める同施設に、
直営店「JOTARO SAITO」は六本木ヒルズから移転、オープンした。
進化する伝統をコンセプトに、着物の新たなスタイルを提案し続ける斉藤上太郎氏に話を伺った。

着るものとして、素敵かどうか。

初代、二代目、そして三代目の上太郎さん。斉藤家の系譜とは?

祖父も父も、和装の常識を打ち破った独創的な配色をする異端児と言われてきました。二人はそれぞれ見ていた時代の中で、何が格好よくて何がそうでないのかということを常に考えながらつくってきたわけです。伝統だから、着物だから、という固定化された考えでなく、伝統工芸ではあるけれども、まず着るものとして素敵かどうかを考えて世の中に発信していくことが斉藤家の家訓のようなものでした。ウチの伝統に則って、私は今の時代の着物をつくっています。

着物の世界でも時代に応じたものづくりがあるんですね。

赤をとっても、子どもっぽい赤もあれば都会的な赤もある。その時代時代のどの赤が格好よくて、どの赤が野暮なのかを、常に見極めることがウチの染色家としての基本目線です。この色とこの色の組み合わせなら、今までになく新鮮でクールに見えるとか。例えば、桜の柄を描くとします。茶色い枝にグリーンの葉、花は桜色に…と着物の職人なら桜が生きたような姿を描きますが、写実的に描けば描くほど、お召し物としてはちょっと田舎くさくなるというのが私の見方なんです。デザイナーとしては、グレーとか水色の桜にしたい。するとモダンでモードっぽくなるんです。美意識というのは時代とともに変わっていくものだと思っています。

時代の価値観、美意識に合わせたスタイルを発信する。

伝統の着物は、いまの時代に受け入れられなくなっているのでしょうか?

よく「本格派」と言われる着物がありますが、京友禅など伝統的な着物ほど着ていく機会は明らかに少ないですよね。そういう意味では何が「本格派」か、ということが変わってくるのだと思います。ラグジュアリーブランドのワンピースを着たらセクシーだったりエレガントだったりその人の魅力が映えるのに、着物を着るとなると急にA子さんもB子さんも同じような訪問着みたいなものに収まってしまう。お金も時間もかけたのに没個性で、そんな「晴れ着」でいいのかと。没個性で晴れてるんですかね?

確かに伝統の「着物」という枠の中でイメージを持たれる人は多そうですね。

純粋に素敵だと思える着物姿を、みなさん見ていない、知らないだけなんですよ。本当に着たいと思えるもの、着物でもエレガントでセクシーに見えるもの。そういういまの価値観、美意識に合わせたキモノスタイルを増やしていくことが私の仕事です。そうすれば、着物を着て街を闊歩することがクールで新しいことだと思ってくれる人が増えていくのではないでしょうか。懐古主義でも民芸品でもなく、ファッションとして、モードとして大人の新しいお召し物を発信し続けていきたいと思っています。

ルーツから進化し続ける、その先端にあるもの。

このGINZA SIXの「JOTARO SAITO」は、東京オリンピックを見据え、日本の新しいキモノスタイルの発信地となっていくのですね?

そうですね。50数年前の東京オリンピックは日本の時代の変わり目でした。2020年もきっとそうなるでしょう。もう一度日本の良さを感じたり、日本のルーツを再認識するきっかけになるのだと思います。極東の島国で大陸の文化の流れからガラパゴスのごとく独自の文化を発展させてきた稀有な国、日本。現代においても、さまざまな伝統文化を受け継いでいることに、最近多くの人があらためてその素晴らしさを感じ始めているのではないでしょうか。そこで、いま着物が何を発信するかということです。

伝統を受け継いだままの着物だけでいいのか、ということですね?

その通りです。着物は懐古主義だけではないということ。ルーツから進化してきた現在の着物文化の姿を、海外の方にも知ってほしいですが、日本人こそ見てほしいですね。さまざまな日本の文化や伝統がアップデートされ、世界からそして日本中が注目するこのTOKYOで、日本の着物をつくる発信者としてどんなファッションを提案できるか。多少、手間なことがかかっても「着てみたい」と思わせるものをつくれるか。そこが勝負です。

和を愉しむ場が広がっている。

伝統を革新される取り組みは、藏持と通じるところがありますね。

おっしゃる通りです。数寄屋造りをベースとしながら現代のセンスや技術を融合させ、新しい日本の暮らしづくりを行う藏持さんは、僕らと似たようなことをしていると思います。日本人の知恵や工夫、技術を受け継ぎ、時代に合わせて革新させていく。それは“住”の文化も、“衣”の文化も、これからのものづくりには必要なことではないでしょうか。

斎藤さんは着物だけでなく、ホテルやレストランなど商業施設のファブリック、インテリアデザインも手がけられている。
和のスタイルを愉しんでもらうフィールドが広がっているんですね。

藏持さんの縁プロジェクトでさらに広がっていきますよ。コラボレーションによって、どんな和のスタイルの住宅空間を生み出せるか、私自身も興味深い思いで参加させてもらっています。また、現在藏持さんの新事業として、アジアに向けた和の住文化を伝えるプロジェクトが進行しています。日本伝統の建築文化と、縁プロジェクトに参画するさまざまな伝統の作り手の方々の技と、私のキモノデザインと協創する形で、新たなジャポニズムの風を吹かそうと。五輪を控えたTOKYOで日本文化が盛り上がっていくのも楽しみですけど、こっちの方のムーブメントも結構楽しみだったりします。

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