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縁プロジェクト_vol.14

日本の未来へ
木、人、林業を育てていく。
松浦 薫
協和木材株式会社
プロジェクトディレクター
松浦 薫氏
PROFILE

鹿光学園青山製図専門学校店舗デザイン学科卒業。株式会社ジャパンクリエーティブエージェンシーで店舗設計などを手掛けた後、2004年協和木材株式会社入社。営業部副部長、東京営業所所長を歴任。2016年に一般社団法人日本WOOD.ALC協会事務局長に就任。著書に『世界で一番くわしい木材15』などがある。

良質な杉や檜の産地として知られる八溝山系で
国内最大規模のJAS 認定工場(福島県東白川郡塙町)を構える協和木材株式会社。
国産材の安定供給を実現するとともに、山の保全・森林育成や林業従事者のサポートにも力を入れ、
持続可能な森林経営を実践している。事業の牽引役、松浦氏のもとを訪ねた。

国産材の魅力が知られていない。

この塙工場は山深いところにあるんですね。工場もとても広い。

もともとこの地では戦後から林業が盛んで、当社も創業当初は原木の販売から始めていました。その後、製材を始め国産材の量産体制を整えてきました。今では国産材の魅力をご存知の方にはご満足いただける形で使っていただいてますが、日本全体でみれば依然として輸入材の存在が大きく、国産材の自給率はわずか3割程度に過ぎません。日本の森林面積は約2,500万haで国土の2/3も占めていて、森林率では世界トップクラスだというのに。

なぜたくさんある木が使われないのでしょうか?

ここ八溝山系は水はけがよく、目の細かい木が育ちます。八溝杉は全国平均よりかなり高い強度を持っているんですよ。曲げ強度はベイマツよりも優れており、杉がねばり強いことは実はあまり知られていません。変形性能が高いということは、もし大きな地震などが起こった時でも折れにくく、避難空間を確保しやすくなります。昔からこの国で使われてきた国産材の質は、徐々に見直されつつありますが、まだまだ理解が浸透しているとは言えません。

独自の一貫体制で、国産材の安定供給を実現。

国産材の良さがわかっているとしても、踏み出せない理由はあるのでしょうか?

特に大手のハウスメーカーさんなどは大量安定供給を求めます。乾燥技術もある程度しっかりして、量を確保できる輸入材を選択することは致し方ないことかもしれません。だから、私たちはJAS 規格に則った確かな品質の国産材を、いつでも安定的に供給できる体制を構築してきました。立木の購入から伐採、加工、販売までを一貫した体制にすることで、間を介さずお客さまに直接供給することができます。しかも輸入材に対抗する品質とコストで。このことを家づくりをする人たちに知ってもらいたいですね。

乾燥にも独自のこだわりがあるそうですが?

はい、通年でいつでも供給できるようにするために、また材の品質を損ねないように独自の乾燥方法を生み出しました。一般的には高温で一気に乾燥するのですが、そうすると木の風合いも失われ、内部の繊維が傷んでしまいます。そこで高温乾燥だけでなく、もう一手間かけて内部をゆっくり乾燥する中温減圧乾燥を取り入れ、材の性質を損なわないようにしています。乾燥に使用するボイラーには化石燃料を使用せず、木屑や伐採の際の残材を有効利用しているのも特徴です。木を育て、山も守る私たちが、環境を損ねるようなことはしたくありませんから。

山村地域を活性化させ、林業の再興を目指す。

日本の木に囲まれて暮らすことは素晴らしいことですよね。

この国の歴史的建造物は皆、木で造られていますよね。先人たちはそれが確かな材であることを知っていたわけです。日本の豊かな風土で、しかも身近な地域で育った木の家で暮らし、本物の良さに触れる。住まう人にとって心落ち着くものになりますし、満たされるものがあるでしょう。それに、地域の木材を選ぶということは、その地域を仕事場に林業を営む人たちの生活のためにもなり、地域の活性化につながるのです。現在、衰退している日本の林業も、地域のビルダーさんや家を建てるお客さまの理解をいただいて、こうした地産地消によって発展していくことが必要ではないでしょうか。

木や山を育てる人たちがいなければ、国産材の普及には繋がらないですからね。

その通りです。私たちの素材生産部隊には伐採の職人さんたちがいます。もともとは「一人親方」と呼ばれ、誰に雇用されず職人を抱えず、フリーランスのように仕事をしていた人たちです。しかし、労災保険などの福利厚生面では恵まれていませんでした。そこで協和木材では一人親方の協力組織として「協栄会」を発足させ、労災保険や社会保険、年金など福利厚生の充実を図りました。林業従事者は高齢化し、山村での働き手が減りつつある中で、若い人たちが林業を目指すようになるには、こうした取り組みは不可欠です。いま、若い労働者も増えつつあり熟練の技術者がその技を伝えています。国産材の木で豊かな暮らしづくりに貢献できることに意義を感じている若者がいることは、とても喜ばしいことです。

木を育てるだけでなく、人も育てているんですね。

それと、地域活性化のために模索しているのは、リタイアした人たちの働く場をつくること。現在、杉の製材の際に廃棄される葉を有効活用して、杉葉のアロマオイルを開発しています。高齢の方でも簡単につくれるように商品化が進めば、引退した人たちの雇用を生むことができます。まだ試験段階ですが、こうした新しい商品開発をもっと進めていきたいですね。

豊かな木の暮らしづくりを日本の未来へ、世界へ。

木と住まい。協和木材さんと藏持。互いの関係が豊かな暮らしづくりに貢献しているのだと感じました。

日本の木で、日本の暮らしの礎となる家をつくる。藏持さんと私たちが手を携え、豊かな暮らしを増やしていくことに、お互い意義を感じながら日々仕事に取り組んでいます。良き日本の資産を大切にし、技や文化を後世に繋いでいく。そうした思いが一緒だったから、これまでいろんな藏持オリジナルの意匠性の凝った製品づくりにも応えてきましたし、縁プロジェクトにも大変興味深い思いで参画させていただきました。

藏持との関係において、これからの展望は?

国産材のポテンシャルはまだまだ広がると思っています。近年、公共建築などで注目されている集成材も然り、もっと日本の木で豊かな暮らしづくりに貢献していきたいですね。今後、藏持さんは海外進出されますが、私たちの技術と日本の木で、この国の素敵な住文化を多くの人に感じてもらえると思うと、今から楽しみで仕方がありません。私たちは一丸となって、最高の準備をしたいと思っています。

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