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縁プロジェクト_vol.13

不易流行のものづくりで
日本と世界に緑茶の文化を
伝えていく。
加藤 重樹
株式会社カクニ茶藤
代表取締役社長
加藤 重樹氏
PROFILE

カナダでファームステイ生活を送った後、1991年に帰国し、家業であるカクニ茶藤に入社。1993年、23歳の時に同社代表取締役に就任。培ってきた茶の知識とコミュニケーション力でグローバル企業の茶商を相手に、アメリカをはじめドイツ、アジア、オセアニア各国で販路を広げてきた。有機緑茶の製造に力を入れ、有機栽培のベンチャー事業にも参画。高品質な日本の緑茶をつくり続けている。

日本茶の製造、加工及び輸出業を営む株式会社カクニ茶藤(静岡県静岡市)。
国内では誰もが知る大手飲料メーカーのペットボトル茶飲料をOEM 製造するほか、
アメリカ本国の大手コーヒーチェーンに抹茶などさまざまな緑茶製品を供給している。
代表の加藤さんに茶づくりへの想いを伺った。

二代目でも自分の道は自分で切り開く。

お父様が始められた家業を継ぐ時は、どのような思いがあったのでしょうか?

実は最初、継ぐことはしっかり考えていなかったというか。卒業してしばらくの間は、カナダの農場でファームステイをしていたんです。でも、ある時、お金が底をついてしまって。実家から送金してもらおうとしたのですが、電話をした父に聞くと母の体の具合がよくないと。それで急遽帰国して、母が仕事ができない代わりに私が家業を手伝うことに。それが家業をするきっかけなんです。
志と呼べるものを抱いていないまま仕事をし始めましたが、次第に自分なりに緑茶を広めることを考えはじめ、23歳の時には二代目として継ぐことになりました。それほど歴史もない会社でしたし、自分の中ではあまり背負うものを感じていなかったので、業界特有の古い慣習や考え方にとらわれることなく、自由気ままにやってきました。

海外への輸出が好調のようですが、いつ頃から始められたのでしょう?

もう30 年以上前ですね。父の代からですから。父の背中を見ていたこともあって、私も自分なりに海外へ日本茶を広める道を切り開いていこうと考えていました。アメリカで開催される世界の茶業者が集まる大会に、私は何回か日本の団体の通訳として参加しました。その時に出会ったのがリシティー社の社長です。そこから数回会ううちに、世界中の一流の茶葉を取り扱う彼の目に適うものをつくろうと、地元に限らず鹿児島・宮崎まで有機栽培をしている生産農家を探して、これぞと思う荒茶を厳選して仕入れ、自社で製品化してきました。そうした海外のお客さまや生産農家の方々、社員たち。私は人との出会いに恵まれたから、今があるのだと思います。

有機緑茶のレベルを高めていく。

いま、緑茶や抹茶は海外の方に人気のようですね。

アメリカではコーヒーショップはもちろん、アイスクリームショップ、チョコレートショップ、スーパーに行っても、「Matcha」「Green Tea」の商品をたくさん見ることができる。「Washoku」ブームや緑茶が「Japanese Super Food」であることなどから、健康志向の層に受け入れられているのでしょう。世界の緑茶消費者の平均年齢は60 歳代ですが、アメリカでは30歳代といいます。
確かに、健康への意識も感度も高そうな人が、スタバでタブレットを見ながら抹茶を飲んでいるシーンをよく目にしますね。

健康への意識が高い人たちが求めるお茶のクオリティは高そうですね。

アメリカではそうした健康志向の人々にとってお茶は有機であることが当たり前です。抹茶は何にでも混ぜやすく、茶葉を全摂取するものですから、農薬を使用することはありえないという考え方。質の高い有機の緑茶を提供するために、生産農家から仕入れるだけでなく、最近では宮崎県でジョイントベンチャーで有機栽培を始めました。土壌から全てコントロールして生産するわけですが、これがなかなか難しい。自信を持っておすすめできるものをつくっているつもりですが、日本で茶づくりを極めた名人と言われている生産者の方のものと比べてしまうと、まだまだ。なんとかそれに並ぶ、いや超えるものをつくろうと試行錯誤を繰り返しています。

変わらないもの。変わっていくもの。

海外で人気の緑茶。日本ではどうなのでしょう?

輸出は伸びていますが、残念ながら国内の生産量も消費量も下降しています。ここ静岡でも昔に比べたら業者の数はかなり減っているんですよ。ただペットボトルの緑茶飲料は増えつつあります。スーパーに行って見ていると、おじいちゃん、おばあちゃんが2リットルのお茶を重たそうに脇に抱えてレジに並んでいる。それが現実。自宅で急須で淹れるのは面倒なのでしょう。食べ物やファッションのように、お茶もファスト化しているんですね。この流れは仕方ないことかもしれませんが、なんとか純粋にお茶を愉しむような暮らしを多くの方にしてもらいたい、そう思っています。

最近、メディアでは緑茶もテロワールやシングルオリジンだ、という声が聞こえますが。

それは、なんとかお茶に振り向いてもらおうとする供給サイドの考えですよね。売れないからなんとかしてドアを叩きたい、その現れだと思います。それがいいかどうかじゃなく、ひとつのアプローチとしてはありだと思いますよ。それと、最近シンガポールに出店した抹茶のカフェが京都にもオープンしましたが、升に入れた抹茶ティラミスが大人気のようですね。日本の文化を逆輸入する方法は、日本人には響くものがあるのではないでしょうか。
そんな例がありますが、私たちは私たちなりにもっと違うアプローチをして、緑茶を、緑茶を愉しむ文化を日本でも海外でも広められるように、いま模索しているところです。私たちのしていることはまさに「不易流行」という言葉に凝縮されていると思います。
この国が受け継いできたお茶や文化への想い、お客さまに徹底的に応える愚直な姿勢、そうしたものは私たちの中では変わらない。
そこをベースに、つねに時代を見て革新的な視点でものづくりをしていきたいですね。

志がリンクした。

「不易流行」はものづくりをする人、企業にとって大切な考えですね。

それとこれからは「融合」が鍵だと思います。先ほど、この静岡でも茶業者は減っていると言いました。もう淘汰されないと生き残れない状況になっていることはみんなが感じている。だから私たちも新しい生産者や環境を見つけてサプライチェーンを開発し海外の需要に応えようとしたり、茶器などをつくる作家さんたちと一緒になってお茶の文化を発信したりしていますが、それだけでなく、異業種や異文化との融合も視野に入れていく必要があると思っています。人種や宗教にもとらわれることもなく、世界中で私たちと感性がリンクする人たちと一緒になり、ダイバーシティの考えでものづくりをしていきたいですね。

加藤さんの感性と藏持の感性がリンクするところがあったのですね?

ええ。家づくりという機会は日本の暮らしの文化を見直し、あらためて考えるいい機会だと思います。お茶の文化についてもお客さまに提案されているという藏持さんには共感できましたし、不易流行を実践し、世界を見据えて日本の文化を発信する動きをされているところに新たな可能性を感じました。志が同じ人たちと一緒に何かを始められることは、経営者としてとても心強く、ワクワクできていいですね。縁プロジェクトでのこれからの融合がとても楽しみです。

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