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縁プロジェクト_vol.06

心地よい暮らしを
みなさんといっしょに考え
つくりたい。
金子 憲一
雨晴 主人
金子 憲一氏
PROFILE

1978年、江戸鼈甲の彫刻師の家系に生まれる。2000年、日本の工芸に携わる仕事に従事し、日本全国を旅しながら作り手との関係を築く。2015年に南陽オモビト株式会社入社。同社クラフト事業部部長/ディレクターとして同年12月に雨晴(あまはれ)を開業。

手馴染みのいい急須で煎茶を入れる。傍には季節を感じる景色盆栽を添えて。
こだわりの道具で家族やお客さま、自分をもてなす。
そんなひとときを愉しむ暮らしを描いたのが藏持の「自分メイド」のイメージビジュアルだ。
この撮影で使用しているものは、自然に寄り添う暮らしの道具を扱う「雨晴」(港区白金台)のセレクトによるもの。
主人の金子氏に、心地よい暮らしづくりについて話を伺った。

日本に、こんな格好いいものがあったとは。

雨晴を立ち上げられた経緯を教えてください。

もともと学生時代からインテリアに興味がありました。その頃、日本では北欧やミッドセンチュリーの家具や雑貨に注目が集まり、インテリアシーンが活性化されている時期でした。特に海外のものに影響されていた方が多かったと思います。私自身もそうでした。日本のものには実はあまり興味がなかったんですね。最初に就職したのはインテリア事業を運営する会社で、和をコンセプトにしたブランドのオープニングスタッフとして入社しました。そこで開店準備のために段ボールから商品を取り出していた時のこと。手にした南部鉄瓶に衝撃を受けたんです。「こんなに格好いいものが日本にあったのか!」と。

それで日本のものに目覚めたのですね?

ええ。その後ご縁があり、工芸都市である富山県高岡に本社を置く南陽オモビト株式会社に入社します。そこで経営陣の「地元のものを中心に日本の工芸に携わる事業をはじめたい」という高い志に感銘を受けて、プロジェクト実現のために私も参画することになりました。

自然に寄り添い、暮らしをつくる人々がいる。

「雨晴」という名前に込められた思いとは?

本社のある高岡市に雨晴(あまはらし)海岸というところがあるんですが、ここの自然がつくった景観が本当に息をのむほど美しくて。日本人にとって本当に心地よいくらしとは自然との関係が良好であること。新しくつくるブランドが皆さまと関わることでそれが実現できればという想いをずっと持っていました。身近なところに「雨」と「晴」というまさに自然を象徴する言葉が入った地名があることを知り、名前をお借りすることにいたしました。コンセプトは、雨の日も晴れの日も、心からくつろげる暮らし。そんな暮らしをつくるために、全国の作り手の方々の元を訪れ、自然に寄り添って暮らし、ものをつくる様子を見て、これぞと思う工芸を選ばせていただいています。

作家さんたちのどんなところに共感するのでしょう?

作り手の多くの方に共通しているのは、自然とともに愉しみながら暮らしているということです。その風土に根ざした暮らしの中で素材と真摯に向き合い、その人でしか生み出せないものを手でつくっている。そして、その人自身の暮らしもちゃんとつくれている。そこには自然との心地よい関係性があるんですね。そういうことを知ってもらうことで、ものの価値もお客さまに伝わるのではと思い、ホームページで作り手さんのコラムを書いています。それに、みなさん実際つくった作品を丁寧に日常的に使いこなしているので、そうしたところも心地よい暮らしのヒントとして見ていただければと思います。

心地よい暮らしを考えつくる。作り手とお客さまとともに。

お話を伺っていると、工芸そのものを売るというより、暮らし方を考えるきっかけづくりをしているように思います。

そうですね。以前は当然のように店舗に行って、ものに直に触れて買うという方がほとんどでしたが、今はそれが難しくなってきているなと感じています。ネットでいろいろ探せて購入できますから。店の役割は整理されてきていると思っています。ただいいものを集めました、だけでは物足りない。私たちは「ものを売る」という考えではなく、心地よい暮らしをつくりたいんですね。それも、みなさんと。作り手の方々、使うお客さま、その間に私たち雨晴と、三者でみんなでいっしょに心地よい暮らしを考えつくる。ここは、あくまでそういう場として成り立てばいいと思っています。暮らし方を押しつけて売るなんて、おこがましいですから。

ワークショップを定期的に開催されていますが、まさにその考えあってのことなんですね。

その通りです。雨晴ではいろんな作り手の方に来店いただき、例えば飯茶碗の絵付けの教室を開催したり、中国茶の時間を作家さんと一緒に愉しんでいただいたり、いまの時季なら桜の景色盆栽教室を開催したりしています。ただの教室では終わらないようにもしていて、教室の後には家での花見の練習と題して、お酒とおつまみを振舞ってご自身が作った盆栽を愛でながらわいわいと楽しめるような時間もつくるようにしています。ワークショップは作り手と使い手と雨晴、みんなの距離が近くなるのがいいですね。作る人の話が直に聞けるだけでなく、お客さまの中から「もっとこういうものができないか」という声も作り手の方に直接届いたりする。お互いがコミュニケーションをとりながら、それぞれにとって心地よい暮らしをつくることにつながると思っています。

住まいづくりに、器を提案する。

暮らしをつくるという意味では、藏持と考えが似ている気がします。

はい。私たちも、ものを売るのではなく、暮らしをつくることを考えた時に、それを伝える「空間」が大事だと思っていました。ちゃんと暮らしが見えるシチュエーションを示さないと、雨晴の考えが伝わりにくいと思っていたところです。住まいでそれを伝えられれば一番わかりやすいですよね。それに「縁プロジェクト」は暮らしの文化を高めるためにいろんなマイスターが関わりますから、そうした方々といっしょに暮らしをつくれるのは素敵なこと。私たちにも協力できることがあればと思い、参画させていただくことになりました。

これから藏持の家づくりにおいて、「雨晴」セレクトのものを提案できるようになりますね。

現在、雨晴では「集い、語らう、ご飯の時間」「おもてなしの、お茶の時間」「自然を肴に、お酒の時間」というそれぞれの時間をイメージしながら、器やくらしの道具をセレクトしています。今後は家を建てられるお客さまの暮らしの考え方を伺いながら、心地よいくらしを実現できるおしなものをご用意できたらと考えております。雨の日も晴れの日も、心からくつろげる暮らしを、これからは藏持さんを交え、四者で考えていく。とても楽しみですね。

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